草野 優さん

SPring-8との連携を生かし
安全・安心な電池を。

理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
博士課程前期課程 2年生 ※取材当時

草野 優 さん

私は生まれつき聴覚に障がいがあるため、補聴器が欠かせません。最近の補聴器には、繰り返し充電が可能なリチウムイオン電池が使われています。テニスに打ち込んでいた高校時代、補聴器が汗で劣化して電池がかぶれを起こし、耳のまわりに炎症を起こす事態に見舞われました。その経験から「電池の安全性を高めることはできないか」と思うようになりました。また、皆さんもご存じのようにリチウムイオン電池は、携帯電話や電気自動車など、私たちの身の回りで数多く使われています。しかし、電池の寿命が尽きた時、安全にゴミ処理ができるかといえば、そうではない状態にあります。そこで私は、耐久性があり、廃棄する時にも安全なリチウム電池の研究を進めています。

※2021年4月4学部(理学部・工学部・生命環境学部・建築学部)開設。
この学部学科名はそれ以前のものです。

SPring-8 (Super Photon ring-8 GeV、80億電子ボルト)とは、世界最高性能の放射光(電子を光と同等の速度に加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する細く強力な電磁波)を生み出すことができる大型放射光施設。関西学院大学はこの施設と連携し、バイオ・ナノテクノロジーなどの分野で高度な研究に取り組んでいます。

新たな電極材料に、次世代の
二次電池の可能性を見出す。

安心・安全なリチウム二次電池実現のために、私が学部時代に行ってきたのが「リチウムイオン電池に用いられる電極材の研究」です。電極の材質・構造を改良することによって、リチウムイオン電池の発熱・発火を防ぐことを目的にしています。今まで使われていない素材を試すなどの研究を重ね、大学院ではこの研究をさらに発展させて、有機高分子を用いた固体電解質や電極材料の研究に取り組みました。具体的には医薬品や食品に用いられているシクロデキストリンを用いるというもの。医薬品や食品に使われている物質なので、環境にやさしいことは分かっていますが、電極として機能させるには解決しなければならない問題があり、その原因を探っています。

世界最高峰施設、SPring-8の
分析データを自らの研究に生かす。

電極材料が私の研究の主軸ですが、安全・安心な電池の実現のためには、機能性材料そのものの研究を参考にする必要があります。今まで報告されていない材料を電池に使った時に、どのような化学反応が起きているのかを知るために、私の所属する吉川浩史先生の研究室ではSPring-8にて分析を実施。その分析を私が担当しました。機能性材料を研究する者、私のように電極材料を研究する者が、それぞれSPring-8で測定したデータを分析し、自らの研究に活用しています。私は大学院修了後、リチウムイオン電池の研究開発および製造で実績を持つ電機メーカーに就職します。大学・大学院時代に得た知見、SPring-8での実験で身につけたスキルを生かし、安全・安心な電池の実現に貢献したいと考えています。

PROFILE

草野 優さん

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理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
博士課程前期課程 2年生 ※取材当時

草野 優
(くさの まさる)

兵庫・尼崎北高校出身。関西学院大学理工学部※卒業。東日本大震災および福島第一原子力発電所事故、そしてその後のエネルギー不足などからエネルギー問題に興味を持ったことをきっかけに環境問題の解決に貢献したいと関西学院大学理工学部に進学。大学・大学院を通して吉川浩史研究室で二次電池の研究に取り組む。大学院修了後は、大手電機メーカーに品質管理のエンジニアとして就職する予定。

※2021年4月4学部(理学部・工学部・生命環境学部・建築学部)開設。この学部学科名はそれ以前のものです。

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