羽村 季之教授

機化合物づくりの
“匠”をめざす。

生命環境学部 環境応用化学科※

羽村 季之 教授

有機化合物による機能性材料は、無機物と比べて加工しやすいなどのメリットが多く、スマートフォンの有機ELディスプレイなど、私たちの身のまわりでも幅広く活用されています。ですがこうした有機化合物は、簡単に作り出せるものではないのです。「こんな機能を持つ有機化合物が欲しい」と思っても、それを人工的に作る技術はまだまだ確立されていません。私の研究室では、そんな有機化合物を意のままに、より効率的に作り出す方法についての研究に取り組んでいます。めざすは有機化合物づくりの“匠”。これまでにも何度も「誰も作り出せなかったもの」を作り出すことに成功し、その成果は医療分野やエネルギー分野などで活かされようとしています。

誰も作ったことのないものを作ることに挑み続けてきた羽村先生。「在学期間に成果を出したいと考える学生にとって、トライアンドエラーが繰り返されるここでの研究はたいへんかもしれません」と先生は話しますが、それ以上に研究者としての計り知れない価値や成長が得られる場であることは、間違いありません。

MRI、二次電池…。
作っているのは「未来の材料」。

理化学研究所などの研究機関やさまざまな企業と、数多くの共同研究プロジェクトを進めています。そうしたなかで得た成果のひとつが、MRIの感度向上。がん細胞のイメージングなどにおいて、私たちが合成した有機化合物を用いることで、感度を高めるという効果をもたらすことができました。また、エネルギー分野においては、リチウムイオン二次電池の容量をより大きくするうえで、私たちが合成した有機化合物が有効であることがわかり、現在、さらに応用研究が進められている段階です。
有機エレクトロニクス材料をはじめ、機能性材料としての有機化合物の可能性はまだまだ未知の部分が多い。つまり、これまで誰も考えつかなかったような機能を持った機能性材料を、自分たちの手で作り出せるかもしれないというチャンスも、限りなく広がっているのです。「難しいとされてきた合成も、私たちの手にかかればこの通り!」というのをどんどん実現させていきたい。トライアンドエラーを重ねるなかで、まったく予期しなかった偶然の産物が生まれて、それが新しい機能の発見につながることもあります。それも含めて、面白い。私たちは未来の材料を作っているんだと、実感できています。

思い通りにならない時ほど
ワクワクする。

まず「こんな機能を持った有機化合物ができないか」「こんな分子構造ができないか」と頭の中で設計し、その組み立て方を実験でいろいろ試して探っていく、というのが私たちの研究の基本的な進め方。考えていた通りの結果が得られればいいのですが、そんなに簡単にはいきません。失敗も多く、言葉通り試行錯誤の繰り返しです。でも私はむしろ、うまくいかない時のほうがワクワクします。研究室の学生たちと一緒に原因を探りながら、またいろいろな作戦を立てて、次の実験へと歩を進めていく。その過程を、すごく面白く感じます。
私たちの合成は、よく山登りに例えられます。頂上というゴールに向かって、急な坂道を選ぶのか、なだらかな道を大回りで進んでいくのか。私たちの研究室では、一気に坂道を駆け上がるような考え方で、より高エネルギーな分子構造をめざすといったケースが多い。もちろんプロジェクトの性質によってアプローチは変わりますが、大切なのは、ベストなルートを見出すための着眼点です。その目を養うには、やはり経験が必要。学生たちには、失敗した時は何がダメだったのかを私と話し合って一緒に考えることで、時間はかかっても確かな着眼点が持てるようになるよう指導しています。

PROFILE

羽村 季之教授

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生命環境学部 環境応用化学科※

羽村 季之 教授
(はむら としゆき)

博士(理学)。専門分野は有機化学。1998年慶應義塾大学大学院理工学研究科化学専攻修了。東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻助手、東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻助教を経て、2008年4月より関西学院大学理工学部化学科准教授。2013年4月より教授(改組により2021年4月から生命環境学部環境応用化学科)。日本化学会進歩賞(2007年)、Thieme Chemistry Journals Award(2008年)、文部科学大臣表彰若手科学者賞(2012年)、Banyu Chemist Award 2012(2012年)、科研費審査員表彰(2015年)、村尾育英会学術賞(2015年)、長瀬研究振興賞(2020年)など受賞歴多数。

写真

※2021年4月誕生

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