片山 昇さん

一期生としての研究成果を、
未来へと連なるバトンに。

大学院 理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
修士課程2年生 ※取材時点

片山 昇さん

スマホやPCなどのリチウムイオン電池は、中に電解液という液体が用いられています。引火性があるため、電池が破損してこの電解液が漏れ出すと、事故の原因になりかねません。私が取り組んできたのは、この電解液を固体に置き換え、電池の安全性を高める研究です。2015年4月に先進エネルギーナノ工学科の一期生として入学した私は、学部4年生の時に松尾元彰先生の研究室に入り、この研究をスタート。新しい装置を導入する時も先生と一緒に試行錯誤を繰り返すなど、何もないところから苦心に苦心を重ねてきました。そして修士課程1年生の秋、学会での発表で最優秀賞に。頑張ってきた自分への評価とともに、後輩たちにいい形で研究を継いでもらえることに、大きな喜びを感じています。

活動風景

片山さんが現在の研究に取り組み始めたのは、大学2年次に松尾先生と出会ったのがきっかけ。「授業がわかりやすく、学生目線で話してくれ、親しみを感じました」。当時は先生も本学に着任したばかり。そんな先生と一緒に研究室の立ち上げにゼロから携わってきたことを「たいへんでもあり、楽しくもあった」と片山さんは話します。

あとに続く人たちのため、
「確かな一歩」を残したかった。

私たちの研究室では、リチウムよりも安価で手に入りやすいナトリウムを材料とした電池の研究を進めています。電解液を使用しないナトリウム系の全固体電池による、安全面とコスト面、両面での課題解決が目標です。いつの日か実用化を、という想いはありますが、新しい挑戦にはハードルも多く、私が在籍している3年間でクリアできるような研究ではありません。「よりよい形で後輩たちに引き継いでもらうためにも」と、頑張って研究に取り組んできました。その結果が、受賞にもつながったのです。

5月の学会で優秀賞、11月の学会では最優秀賞をいただきました。めちゃくちゃうれしかったですよ。先進エネルギーナノ工学科の一期生として、あとに続く人たちのために、確かな一歩となる研究業績を残したい気持ちもありましたからね。プレッシャーも感じましたが、それをうまく自分の力に変えることができたとも思います。

後輩に託す夢、自らの新たな夢。
楽しみが、広がっていく。

3月に修士課程を終え、4月からは外資系の電池メーカーに勤務する予定です。一般的にはそれほど有名な企業ではありませんが、最近では鉄道用のバッテリーをつくる事業も始めるなど、将来性が感じられ、自分の研究ともつながっているため、志望しました。

もうすぐ今の研究室から巣立つことになるのですが、その前に、またうれしいことがありました。翌年、同じ研究室の1年下の後輩が賞を受けたのです。自分の代が積み上げたノウハウが、次代へ、また次の代へと、確実につながっていきそうだと実感できましたよ。

ノーベル賞を受けたリチウムイオン電池開発ほどの大きな功績でなくても、例えば「こういうところに使われている電池には、自分が関わっている」と言えるような研究成果を残すことが、私の夢。その夢に、これからは企業で挑みます。一方、大学の研究室でも、私の夢はずっと受け継がれると思います。楽しみが、いっぱいです。

PROFILE

片山 昇さん

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大学院 理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
修士課程2年生

片山 昇
(かたやま のぼる)

福岡県・自由ケ丘高校出身。震災を機に原発不要論が唱えられるなか、知識がなくて賛成も反対もできない自分に不満を覚え、「せめて自分の意見が持てるくらいの知識をつけたい」と考えて、エネルギー関連の学びができる大学への進学を希望。なかでも当時新設されたばかりの先進エネルギーナノ工学科を選んだのは、「第一期生として自分が取り組んだことが後に残り、卒業後もずっと続いていくことになるのが楽しみ」と感じたから。修士課程1年次に第6回「公益社団法人日本金属学会研究会 水素化物に関わる次世代学術・応用展開研究会」のポスターセッションで最優秀賞を受賞。ケーキなどのスイーツが大好きで、休日には神戸の三宮や元町のパティスリーを巡るのが趣味。

ポスターセッション
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