吉川 浩史教授

環境に優しい新材料で
超高性能なバッテリーを。

工学部 物質工学課程※

吉川 浩史 教授

スマートフォンのバッテリーから、「脱炭素」で注目が集まる電気自動車に至るまで、二次電池の需要は高まるばかりで、さらに大容量や長寿命といった高性能化も求められています。私たちの研究室で取り組んでいるのは、そんな新しい時代に対応する、新しい仕組みを持った二次電池の研究です。従来のリチウムイオン電池は遷移金属酸化物という稀少な物質を用いていますが、これを豊富な資源に置き換え、環境にも配慮。2019年には、2種類の有機物を混ぜることで電極材料の特性を飛躍的に向上させる手法を開発し、その研究成果は英国王立化学会の総合化学誌「Chemical Science」にも掲載されました。この技術が実用化されれば、これまで数時間かかっていた充電を数分間に短縮することも可能です。

研究風景

吉川先生が研究者として大切にしているのは「克己心」と「楽観的であること」。困難を乗り越え、学会や世界中の研究者と渡り合うには執着心を持ち、自らに与えたプレッシャーに打ち勝つ克己心が必要。でも決して悲観的にはならない。相反するようなこれらのマインドが、先生が新しいことに挑戦し続けるうえでの礎となっています。

物質は世界を変えてきた。
「研究」は夢のある仕事だ。

今の研究をスタートさせたのは、2006年頃。もともとは金属錯体の研究を専門にしていましたが、国際会議での発表からヒントを得て、自分が研究対象にしてきた物質が二次電池の正極材料に使えることに気づいたのです。「行き詰まりを感じかけていた自分の研究を、将来性のある新しい分野に活用できる」と意気込みましたが、最初の5年ほどは試行錯誤ばかりでしたね。先例はなく、装置も自分たちで立ち上げるなど、苦労を重ねました。今でこそこの分野の研究者はかなり増えていますが、先駆者である私たちがどんどん新しいことに挑戦して足跡を残し、いちはやく実用化に結びつけたいと考えています。

物質って世界を変えてきたと思うんです。そういう物質を新たに発見したり、作り出したりできるのが何より面白い。夢がありますよ。もちろん、私たちの扱う物質が今使われている材料とすべて置き換えられて二次電池がものすごく高性能化して、世の中の人々が幸せになる、というのも大きな夢です。ただそれ以前に、研究自体が楽しい。だからどんな困難にも向き合ってこられたのだと思います。

「物質工学×情報工学」といった
複数の専門性を持つ人材に期待。

2021年4月に新しく開設される工学部は、物質工学、電気電子応用工学、情報工学、知能・機械工学の4つの課程で編成され、これらをクロスオーバーして学べる体制を整えています。私たちの研究は物質工学の分野ですが、研究の実用化に向けては、電気電子も機械も、切っても切れない関係の深い分野と言えます。そして情報についても、経済産業省がマテリアル革新力強化の戦略として「マテリアルズ・インフォマティクス」を打ち出しており、これからの時代には、新しい物質を機械学習などの情報的なセンスで作り出すといったことも求められるようになります。私たちの研究室にも情報工学を専門にしている学生が入り、その見地から「こうすれば新しい物質ができるのでは?」といった提案をしてもいい。そういう意味では工学部全体で面白いまとまりが期待できますし、また、そうした複数分野にまたがった専門性を持つ人材の育成が、これからの私たちの責務だとも感じています。

PROFILE

吉川 浩史教授

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工学部 物質工学課程※

吉川 浩史 教授
(よしかわ ひろふみ)

1975年奈良県生まれ。2003年東京大学大学院修了。博士(理学)。専門分野は電気化学、錯体化学、物性化学。名古屋大学大学院理学研究科助手・助教などを経て、2015年4月より、関西学院大学 理工学部 先進エネルギーナノ工学科准教授。高校生に向けた大学の体験授業「ひらめき☆ときめきサイエンス」でも、「吉川先生の講義や実験がとても面白い」と参加者からの人気が高い。2021年4月より工学部物質工学課程教授。

研究風景
研究風景

※2021年4月誕生

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