
受け入れて、自分を変える。
それが、進化だ。
生命環境学部 環境応用化学科※
森崎 泰弘 教授
私の研究室では、植物成長を促進するプラスチックを開発しました。光は右巻きと左巻きの二つがあり、通常はその両方が等しい強度で進みます。そして植物は、右巻きの光を好んで成長します。これをふまえ、私たちが開発したのは、植物にとって有害な紫外光を吸収し、右巻きの青色光を高輝度で発するプラスチックです。ケースにして植物を覆うだけで成長効果が期待でき、農業をはじめ、「苗木促成に」と林業の分野からも問合せを受けています。こうした円偏光を発現する材料については10年ほど前から研究を進めてきましたが、有機化学を専門とする自分が林業に関わる日が来るなんて想像していませんでした。何事も、柔軟に受け入れてこそ成長。喜んで挑戦したいと思います。

森崎研究室には、有機化学にかぎらず、無機化学、高分子化学、錯体化学、光化学など、幅広くさまざまな専門知識を持つ学生たちが集まっています。また、研究スケジュールなども学生の自主性に任され、教授が必要以上に指示を出さないというのも、この研究室の特色。
有機化学と高分子化学の両方を
専門とする研究者は珍しい。
有機化学を修めて大学院を出た私が「また大学に戻ってアカデミックな研究がしたい」と考えていた頃のこと。母校の京都大学から「高分子化学専攻の助手に」と声をかけてもらったのです。「有機化学が専門の私になぜ?」と思いましたが、「高分子の専門家とは異なる視点が欲しい」というのが教授の意向と聞き、採用していただきました。それから、かなり勉強しましたよ。何しろ高分子はほとんど学んでこなかったのに、最先端の研究に取り組み、学生の指導もする立場になるのですから。でもおかげで、高分子化学という自分の新しい武器を手に入れることができた。一方で、有機化学という専門的見地から研究室メンバーに助言を行い、それを研究成果につなげるなど、当初からの期待に応えることもできた。有機化学と高分子化学の両方を専門にしている人は、今もほとんど見ません。珍しい存在になれたことを、ありがたく思います。
研究も、人生も、自ら考え、
道を切り拓いていくことが大事。
助手になった時、教授から「こういうテーマでやってほしい」といった指示を与えられるかと思っていたら、「高分子合成なら何でもいい」と言われ、驚きました。その頃に見出したテーマの発展に、今は自分の研究室で取り組むことができています。研究室の学生たちにも、指示を待つのでなく、自ら考えて行動できる人になってほしい。研究では、いくら勝算があっても、いくら仮説を立てても、壁に突き当たることがあります。そんな時こそ「何が問題なのか?」「似た事例はないか?」と、自分で考えたり調べたりして、次の一歩を踏み出していかなければなりません。それは、人生も同じ。私自身が最も大切にしているのは、ダーウィンの教えです。環境に適応して、自分自身を柔軟に変えていったものが、進化し、生き残っていく。自分とは違う発想なども、拒絶せず、受け入れる。これから先も、意外な業界や企業との関わりがあるかもしれません。そのチャンスを逃さず、自分の成長につなげていきます。