街まるごとの未来を
描いていく仕事。
大学院 総合政策研究科 総合政策専攻 2018年3月修了
株式会社安井建築設計事務所 勤務
坂井 章 さん
庁舎やオフィスビル、空港・駅、商業施設など、国内外で多くの著名な建物の設計を手がけている安井建築設計事務所。約380名の社員の半数ほどが設計部に所属していますが、一方で、私がいる大阪事務所の都市デザイン部は少人数の部署です。しかし、携わっている案件のスケールは大きく、例えば国内の仕事では数万平米〜数十万平米、海外の都市計画なら数十万〜数千万平米といった規模に及び、10年、20年といった長期スパンで進めています。ひとつの建物の設計をするのでなく、その前段階となる基本構想や基本計画、コンセプトメイキングなどを担う部署なのです。広大な敷地を見つめ、そこに集う人たちにとっての快適・便利・安全などをふまえて、どのような形・用途の建物をどう配置するか、などを考えていく。街まるごとの未来を描くことが、私たちの仕事です。
地域に根差す設計事務所として、会社がある大阪市中央区・北大江地区のコミュニティに参加。まちづくり実行委員会の一人として、防災イベントや毎年10月に開催される「北大江たそがれコンサートweek」の企画に携わっています。公園で開催される野外コンサートではオーケストラのメンバーとして自らもバイオリンを演奏。地域の人々とふれあいながら、まちづくりの仕事につながる幅広い経験を重ねています。
関わる多くの人々の想いをふまえ、
新たな価値につながる提案を。
広大な都市計画にかぎらず、駅前の大規模再開発や庁舎の建替など大規模公共施設の再編、スタジアムなどのスポーツ施設とその周辺施設の検討など、都市デザイン部での仕事はバラエティに富んでいます。ただ、いずれの場合も建物の詳細を設計するというよりも、敷地全体とその周辺まで俯瞰し、場と向き合いながらどんな用途でどんな大きさの建物を建てていくかといったコンセプチュアルな部分を担います。例えば私が入社以来ずっと携わっている駅前再開発の案件では、鉄道会社や自治体、商業施設など、多くの人々とともにプロジェクトを進めていますが、それぞれの意見や要望をとりまとめ、最適解へと導いていくのも私たちの重要な役割。自分たちが培ってきたノウハウを生かしつつ、幅広くさまざまな視点から課題を見つめ、時にはAIやIoTなど最新のデジタル技術などを盛り込んだ新しい考え方や価値の提供となるアイデアを生み出し、提案・説得していく。そこを利用する人々にとって、よりよい場所をつくりあげるために。都市づくりはパラダイムシフトを迎えており、難しいですが、私はこの仕事にとてもやりがいを感じています。
大学院での地方創生プロジェクトが
今の仕事を志望するきっかけに。
学部生の頃は、建物単体の設計に関心を抱いていました。転機を迎えたのは、大学院への進学後。兵庫県朝来市との産官学民連携プロジェクトで、地方創生に向けた「観光まちづくり」に取り組んだことです。現地にサテライトスタジオをつくって、そこで朝来の街を再現した大きな模型を指さしながら「ここにこんな建物を建てたいね」と、地元の人たちと一緒に話し合って…。みんなでコミュニケーションを図って街をつくりあげていくプロセスが、とても面白かった。「そんな仕事がしたい」と考えていろいろ調べ、結果、今の職場と出会うことができたのです。まだ入社3年目ですが、想像していた以上に責任ある仕事を任せてもらえ、意気に感じています。ただ、これまでに私が携わったプロジェクトが完成するのは、まだまだ先の話。先述の駅前再開発も、計画から完成までは10年以上かかります。だからこそ、楽しみも大きい。そしていずれは、日本での仕事の経験を活かし、海外の大規模な都市計画を任されるようになりたい。そこに向かって、一歩ずつ確実に進むことができています。