データ収集・分析が
次代を変える鍵。
総合政策学部 国際政策学科
西立野 修平 准教授
自動車による大気汚染や地球温暖化など、現代社会にはさまざまな課題があります。何も手を打たないと課題がどんどん悪化していくような場合、政府はさまざまな手段(補助金、税、規制等)を用いて市場に介入します。例えば「環境にやさしい車を購入した時には減税をする」という「エコカー減税」、プラスチックごみを減らすためのレジ袋有料化などは、その代表例と言えるでしょう。これらの政策は一見すると効果がありそうですが、政策が実施されなかった場合と比較できないため、本当に狙い通りの効果を得られたかを検証することは容易ではありません。そこで私は経済学の手法を駆使してビッグデータなどを分析しながら、政策の効果を評価する研究を進めています。
データ分析は、データセットの構築と分析の二つに分けられます。データセットの構築は、データクリーニングや異なるデータの統合など地道な作業が中心になります。分析については、統計分析ソフトウェア(STATA,R,Pythonなど)の発達により、以前よりも格段に容易になりました。しかし、これらのテクノロジーを使いこなすには、プログラミング等の知識が必要です。また、テクノロジーは、日々、進歩しているので、ユーザー側も勉強し続けなければなりません。
ガソリン価格を上げれば
交通事故に遭うリスクは減るのか。
具体的な研究事例としては、ガソリン価格と交通事故死亡者数の因果関係に注目した研究を行いました。ガソリン料金を高く設定すれば、消費者は車の利用を控えるとともに、走行距離も短くなり、交通事故に遭う人が少なくなるのではないか、というものです。実際に走行距離は減って交通事故に遭うリスクは減るという結果も出ましたが、ガソリン価格の変動が死亡者数の変化に影響を与えるメカニズムについては、まだ明確にわかっていません。また、ハイブリッド車や電気自動車など、ガソリン使用量が低い、あるいはまったくない車が普及すれば走行距離が増えると予測されているほか、自動車側の安全性確保の技術発展もあり、まだまだ議論が必要な研究テーマと言えるでしょう。
社会の課題をどうすれば
解決できるのかを考えて欲しい。
私が政策を経済学的視点で評価する研究をはじめたのは、経済産業省で職員をしていた時、「世の中にはこんなに多くの政策課題があるのか。自分も社会の課題を解決する研究がしたい」と感じたことがきっかけです。ただ、経済産業省の職員では与えられた業務をこなすだけで自分の研究を進める時間がありません。そこで大学教員になることにしました。
ゼミでは最初に私が指定したテーマに対して、情報収集・分析をして、その成果を論文にしてもらいます。これまでにWEST論文研究発表会、ISFJ(Inter-University Seminar for the future of Japan)など学生たちが政策論文を発表する大会で入賞することができました。社会の問題に目を向け、どうすれば解決できるのかを考える力を身につけてもらいたいと思っています。