長谷 智美さん

「好き」を究めた成果で
エネルギー問題解決に貢献!

大学院 理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
修士課程2年生 ※取材当時

長谷 智美 さん

工場から出る廃熱をはじめ、日本で1年間に廃棄されている熱エネルギー量は、国内の年間発電量に相当する1兆kWhに及びます。とても、もったいない話です。私たちの研究室で取り組んでいるのは、この廃熱を回収して電気へと変える「熱電場サイクル発電」の研究。省エネに貢献しようと試行錯誤を重ね、その結果、環境にやさしい材料を用いて従来よりも大幅に高いエネルギー変換効率の実現に成功しています。現在、この研究成果を特許申請中。私自身はただ自分の「興味あること」「好きなこと」と向き合い、追究してきただけという気持ちが強いのですが、その成果がエネルギー問題を解決へと導く技術として注目いただけていることに、改めて驚きと誇らしさを感じています。

材料の組成は、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウムなど、様々な試薬を混ぜて行います。その工程は「クッキー作りに似ている」と長谷さんは話します。砂糖や小麦粉の微妙な配分、焼き上げの温度(クッキーでは200℃ほどですが研究では1400℃などの超高温!)を考えるように、これまでの研究をふまえて試行錯誤を重ねます。

「身近な人々の役に立ちたい」
という想いと、
もともとの関心事だった
「宇宙」がつながった。

私の「興味」や「好き」の原点は、宇宙から来たヒーローの特撮TV番組。幼い頃から大ファンで、そこから「宇宙」に強い関心を抱くようになりました。でも大学進学にあたり、私が選んだのは「宇宙」ではなく「エネルギー」の分野。 宇宙は大好きですが、宇宙の謎を解明するといった“理学的アプローチ”ではなく、人工衛星などの宇宙機器を動かすためのエネルギーに着目した“工学的アプローチ”で宇宙と関わっていこうと考えたのです。またエネルギーはスマホや自動車など身近な機械にも必要とされるため、この分野の研究を通して「身近な人々の役に立ちたい」という思いもありました。
そして大学4年の時に出会ったのが、今の研究室。研究テーマの「熱電発電」が、自動車にも人工衛星にも活用されている技術と知り、感動しました。ここでなら、宇宙という極限状態でもごく身近な所でも役立つ「エネルギー」の研究を通して、大好きな「宇宙」ともしっかりと向き合い続けることができる。そう気づいた私は、以後、この研究室で「日常でも極限状態でも利用できる最先端技術を開発して、地球や生命活動をより豊かにする」という夢に向かい、自らの「好き」「興味」を突き詰める毎日を過ごせています。

学外の研究者との交流や
最先端施設での実験など、
今まで知らなかった世界へ
自ら飛び込み、さらに成長を!

国際学会でのオンライン発表、他大学や企業の研究者の方々との意見交換、「J-PARC」や「SPring-8」といった国内屈指の最先端研究施設で実験など、自身の研究を通して、今まで知らなかった世界と出会い、知見を大きく広げることができています。物質・デバイス領域共同研究拠点からは「拠点卓越学生研究員」認定という栄誉も受けました。「興味」や「好き」を追求していったことで、高校生の頃の自分には想像もできなかったような世界が、今、目の前に広がっています。
先日はJST(国立研究開発法人科学技術振興機構)の起業プロジェクトでも、「世界平和に向けた廃熱回生発電事業」で採択されました。実際の事業化をふまえた計画書作成を通して、経営の視点についても学べたのが良かったですね。「研究が楽しい」という想いが私の原点ですが、それだけでは社会は動かせません。実際に使う人の目線など、幅広い視野を大事にしながら、研究者としてさらに成長を重ねていきたいと思います。

PROFILE

長谷 智美さん

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大学院 理工学研究科 先進エネルギーナノ工学専攻
修士課程2年生 ※取材当時

長谷 智美
(ながたに ともみ)

熊本県・真和高校出身。幼少期より、宇宙から来たヒーローの活躍を描いた特撮TVシリーズが大好きだったことから「宇宙」への関心が芽生え、それがきっかけで理系の道を歩み始める。関西学院大学理工学部に入学し、先進エネルギーナノ工学科で学び、4年生の時に現在の田中裕久教授の研究室へ。大学院進学後も同研究室で研究活動に勤しみ、物質・デバイス領域共同研究拠点より令和2年度および令和3年度の「拠点卓越学生研究員」認定を受ける。卒業後は、世界的に知られている国内の電子部品メーカーへの就職が内定している。趣味はお菓子づくりや、手芸など。

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