秋山 拓海さん

ミツバチの巣作りを
数理モデルで解明。

大学院 理工学研究科 数理科学専攻 修士課程2年生
※取材当時

秋山 拓海 さん

ミツバチの巣は「ハニカム構造」と呼ばれる正六角形を隙間なく並べた構造になっており、まな板状のものが平行に並ぶなど、決まったパターンで作られています。いったいなぜなのでしょうか? この疑問を解き明かすことが、私の研究テーマです。しかも生物学的なアプローチでなく、数理モデルを用いた数学的なアプローチで取り組んでいます。人間でも難しい精巧な巣を、体も脳も小さいミツバチが作り上げていくメカニズムを解明すれば、AIを搭載したロボットによるものづくりに応用するなど、社会のさまざまな場面で役立てることができるはずです。そんな想いで研究に打ち込んできた成果を、仁田記念賞の受賞という形で認めていただくことができ、とても誇らしく感じています。

「数学には迷路のようなイメージを持っている」と秋山さん。行き詰まったり同じ道をまた戻ったりを繰り返しながらゴールにたどり着くというのが、迷路と数学の似ているところだそう。「ゴールに着いた瞬間に大きな達成感を得られるのが、何より楽しい。今までの苦労が報われたという感覚があり、それが好きで続けています」。

数学は、現実世界とかけ離れた
学問じゃない。
数理モデルで
社会の課題解決にチャレンジ!

高校生の時に読んだ本で「世の中の多くの現象は数学で表すことができ、数理モデルによって社会のさまざまな問題が解決できる」と知りました。数学は大好きでしたが、それまで「数学と現実世界は別物」と考えていたので、新鮮な驚きを感じましたね。「理論だけを追求するのでなく、数学を社会の問題解決につなげる学びに取り組んでみたい」。そうした視点からいろいろな大学について調べ、「数理モデルを用いて自然現象のメカニズムを解明し、社会の問題解決に役立てる」という大崎浩一教授の研究室と出会ったのです。なかでもミツバチの研究を「面白そう!」と感じ、私は関学に入学しました。
大学4年次に大崎先生の研究室に入り、以後は現在の研究に打ち込み続けています。大学で飼育しているミツバチの実際の巣作りを観察するなど生物としての性質への理解も深め、より現実的な数理モデルを追求。どんなに数理的に美しいモデルでも、実際の現象とマッチしていなければ意味がありません。何より、成果を社会の課題解決につなげることが、私たちの研究の大きな目的なのですからね。

春からは「社会人ドクター」に。
仕事と研究との
相互作用で、両方に良い効果を
もたらしていく。

生物学や物理学など他分野の研究者と連携できるのも、現在の研究の魅力の一つです。神戸大学や山口大学の先生との共同研究では、生物学的な視点から論文を作成することにも挑戦しました。学内外のさまざまな研究者とともに分野横断的な研究活動を進めるなかで、幅広い視野や知見を養っていけるのがうれしいですね。
この春に大学院での2年間の修士課程(=前期博士課程)を修了し、就職も決まっているのですが、後期博士課程に進み、「社会人ドクター」として働きながら現在の研究活動を続けていく予定です。まだまだ研究し足りない、という想いが強くて…。でも実際に社会で働き、世間を知るという経験も必要。私はこれまでも、数学だけに目を向けるのでなく、情緒も含め、他のことから受ける多くの刺激を大切にしてきました。仕事は研究職ですが研究内容は異なりますし、仕事で得た刺激や知見を大学での研究に役立てたり、大学での刺激を仕事に活かしたりと相互作用が期待でき、とても楽しみです。

PROFILE

秋山 拓海さん

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大学院 理工学研究科 数理科学専攻 修士課程2年生
※取材当時

秋山 拓海
(あきやま たくみ)

広島県立広島国泰寺高校出身。中学生の頃から数学が大好きで、家で百ます計算に夢中になって取り組むことも多かったそう。中学3年生の夏休みの自由研究で18世紀の数学者・オイラーについて調べ、その研究に没頭し続けた姿勢に感銘を受けて、数学への興味をさらに強くする。高校卒業後、関西学院大学理工学部数理科学科に入学。4年次より大崎浩一教授の研究室で現在の研究テーマに取り組み、さらに研究を進めていくため大学院に進学。2021年度仁田記念賞を受賞。2022年4月からは社会人として働きながら、大学院の博士課程にも在籍して現在の研究活動を継続する。趣味はカメラ、ドライブなど。

※ 理学部初代学部長で、日本学術振興会の特別研究員制度、関西学院大学の博士課程後期課程研究奨学金の創設にも尽力された仁田勇先生を記念し、優れた研究成果が認められた大学院生に贈られる賞

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