福井 将来さん

財政不安が経済に
与える影響を推定。

大学院 総合政策研究科 総合政策専攻 修士課程2年生
※取材当時

福井 将来 さん

日本政府の借金は年々増え続けています。では借金が増えるたびに国民はどれほどの不安を感じ、その不安は日本経済にどんな悪影響を及ぼしているのでしょう? そんな「財政不安が民間経済に与える影響」が、大学院での私の研究テーマです。面白いのは、国民が感じる不安の「測定」に挑戦していること。政府の借金に対する国民の不安を測る方法は、他のどの研究機関でもまだ確立できていません。そこで私の所属する研究室では数年前から、日本の財政に関係する1万件以上の新聞記事をビッグデータとして活用し、国民の不安を定量的に測る方法を追究。財政政策の効果検証における確かな根拠として役立てられるよう、前例のないこの試みにワクワクしながら取り組んでいます。

高校まではそれほど勉強が好きではなかったという福井さん。今は勉強の魅力に気づき、楽しくてたまらないそう。「一冊の教科書を読んだだけではあまり理解できなかったとしても、他の学問分野も含めていろんな教科書を何冊も渡り歩いていくなかで、初めて見えてくる景色がある。冒険物語を進めているようで、すごく面白いんです!」

経済学の理論だけでなく、
情報工学の手法を活用。
学部時代の分野横断的な学びが
生かされている。

中学生の頃に見たテレビ番組で財政政策や経済学に興味を持ち、「将来は研究者になりたい」と考えるように。当時から「財政政策は景気回復に有効」と考える一方で、政府の借金増加を伝える報道には危機意識を募らせていました。「借金への不安は経済に影響しないのかな?」と。大学院でようやくその実態を明らかにするための研究ができ、うれしく感じています。
国民の不安の測定には、機械学習の分野でよく使われているテキストマイニングという手法を用いています。1975年頃からの新聞記事を分析して、国債の増加に対する国民の不安の時系列的な推移や相関を読み解いていくんです。経済学の理論だけでなく、こうした情報工学の考え方も活用した分野横断的な研究ができるのは楽しいですね。学部時代の授業でも政策や経済学のほか、情報工学系のデータ分析手法やAIなど幅広く学び、そこで養われた知識が今の研究のなかで存分に発揮できています。今後は新聞記事だけでなく、テレビのニュースやSNSで発信される個人の声など、あらゆるメディアから国民の不安を捉える仕組みを築くことが課題の一つです。

財政政策について一人ひとりが
「自分の意見」を持ち、
活発な議論や的確な評価ができる
社会を築くために。

「景気回復のために積極的な財政政策を」といった議論がある一方で「国債が増え、国民の不安が高まることで何が起こるか」といった“副作用”についての定量的な分析は進められてきませんでした。そこを明らかにすることで、財政政策についての議論も大きく発展させることができると思います。 税金や財政に関心を持つ人は多く、SNSでも財政政策に対するいろいろな意見が飛び交っています。ただ経済学のなかでも比較的難しい理論が使われる分野ですので、「どの意見が正しいか」はなかなか簡単には判断できません。ですから私は今の研究を通して、経済学の難しい面をわかりやすく広く国民全体に伝えることで、一人ひとりが国の財政政策について「自分の意見」を持ち、誰もが的確な評価や判断ができるような世の中になれば、と願っています。
そのためにもまず、今の研究を論文として発表することが第一の目標。修士課程のなかで実現したいですね。日本の財政政策は世界でも注目されていますし、世界的に見ても価値の高い研究。博士課程に進み、さらに突き詰めていきます。

PROFILE

福井 将来さん

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大学院 総合政策研究科 総合政策専攻 修士課程2年生
※取材当時

福井 将来
(ふくい まさき)

大阪府・関西創価高校出身。中学生の頃、テレビ番組を通して「財政政策は経済学のさまざまな理論を根拠として行われている」と知り、経済学や財政政策に興味を持つ。「政策について幅広い視点から学んでみたい」という思いから2018年4月に関西学院大学総合政策学部に入学。総合政策学科で政治・政策学、経済学、さらには機械学習を用いたデータ分析など幅広くさまざまな学びに取り組み、ゼミでは労働雇用問題をテーマとしたグループ研究を行い「関西学院大学総合政策学部リサーチ・フェア2020」で優秀賞、「2020年度ISFJ日本政策学生会議政策フォーラム」では分科会賞(労働雇用)と、学内外の政策提言コンテストで優秀な成績を収める。学部を3年間で早期卒業し、2021年4月に関西学院大学大学院総合政策研究科総合政策専攻に進学。亀田啓悟教授の研究室に所属し、現在の研究テーマを追究し続けている。休日にはマンガやテレビのバラエティ番組を楽しむことがいい気分転換に。

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