安井 優香さん

確率論の研究から、
クオンツとして金融業界へ。

大学院 理工学研究科 数理科学専攻 修士課程2年生
※取材当時

安井 優香 さん

大学院の研究室で、確率論について研究しています。なかでも私が専門としているのは「ポアソン過程に代表されるレヴィ過程」。ポアソン過程とは「ランダムに起きる事象」がある期間に何回起こるかの確率を調べる時に用いるモデルで、私はこれを純粋数学の立場から考察しています。値を求めることが目的でなく、「このモデルを数学的に構成するにはどうしたら良いか」、「このモデルにはどんな性質があるのか」を自分の手で証明していくことが面白いんです。こうした学びを生かし、来春からは金融業界で「クオンツ」という数理分析専門職に。大好きな数学の力で、金融システムという社会生活の基盤に関わる仕事ができることを、うれしく思います。

英語で書かれた分厚い専門書を読み解くには大変な時間と労力を要します。「4〜5時間のゼミで1ページ進むか進まないか」で、1冊に数年かけて取り組むそう。でも、だからこそ「何度もページを行き来しながら、証明の内容が理解できた時や、内容のつながりが理解できた時の達成感は格別」と、安井さんは楽しそうに話します。

値を求めることより
「その考え方でいいのか」に
重きをおく、大学での数学に
新鮮な魅力を感じた。

確率と聞くと、サイコロや組み合わせを思い浮かべる人が多いと思います。高校時代の私は、そうした確率の勉強に苦手意識を持っていました。ずっと数学は好きだったのですが、「組み合わせの数は?」といった確率の計算には面白さを感じなかったのです。でもいま学んでいる確率論は、考え方がまったく異なっています。確率を「面積」と捉えて、ルベーグ積分という理論を用いて学ぶのですが、私はこの考え方と出会った時、とても新鮮な驚きを感じました。
高校の数学の授業では、例えば「微分した値を求める」といったことが大事でしたが、大学では「微分していいのかどうか?」を考えることに重きをおく。そこが面白くて、私は大学で、高校時代の何倍も数学が好きになりました。今は確率論の研究が楽しくて仕方ありません。もし高校の数学の授業で当時の私と同じようなモヤモヤを感じている人がいたら、ぜひ大学で、いまとは異なる視点での数学を学んでほしいと思います。これまでに感じたことのないワクワクが、そこから広がるかもしれませんよ。

自らの知的好奇心を
突き詰めていくうちに
想像もしていなかった未来が
切り拓かれた。

大学に入学した頃は「将来は数学教師に」と考えていましたが、学部では目の前にある数学の「面白さ」を突き詰めていくのに夢中でした。学部を早期卒業して大学院に進んだのも、自らの知的好奇心を追求してきた結果です。現在は「確率解析・数理ファイナンス研究室」に所属。研究室といっても大掛かりな実験設備などはなく、「必要なのは本と紙とペンそしてホワイトボード(黒板)」というのもここでの研究の大きな魅力です。自分が「面白い!」と思うことと向き合い、自分の手で証明を導き出していける、私にとって最高の研究室です。
そして金融工学とも関わりの深いこの研究を通して、私はクオンツという職と出会うことができました。教師として生徒のために頑張るのもいいけれど、金融機関の専門職ならもっとたくさんの人々の暮らしの基盤を支えることができる。そんな想いを抱きつつ、それ以上に「社会でも大好きな数学と向き合い続けられる」という期待に胸を膨らませています。

PROFILE

安井 優香さん

050/100

大学院 理工学研究科 数理科学専攻 修士課程2年生
※取材当時

安井 優香
(やすい ゆうか)

大阪府立大手前高等学校出身。小学生の頃から算数が好きで「数学をより深く専門的に学びたい」と考えて、2018年4月に関西学院大学理工学部数理科学科に入学。1年次に台湾での短期留学プログラムに参加し、英語でプログラミングを学ぶという現地での授業を体験。また学部時代はボランティアサークル「SSV(Sanda Student Volunteer)関西学院」に所属し、お祭りなど地域のイベントのお手伝いをしたり、障碍者の自立支援をしたりと、地域福祉の活動にも力を注いだ。3年間で学部を早期卒業し、2021年4月に関西学院大学大学院理工学研究科数理科学専攻に進学。早期卒業の制度により、大学3年次から藤原司教授の「確率解析・数理ファイナンス研究室」に所属。来春の修士課程修了後は、みずほフィナンシャルグループのQDT(クオンツ・デジタルテクノロジー)コースでの入社が内定しており、数理分析の専門職「クオンツ」としての活躍が期待されている。趣味はピアノ。幼稚園の頃から習っていて、次回の発表会に向けて今も練習を頑張り続けているそう。

一覧へもどる