
観測ロケットを打ち上げ、
宇宙の成り立ちの解明へ。
大学院 理工学研究科 物理学専攻 修士課程2年生
※取材当時
松見 知香 さん
まだまだ謎の多い宇宙の創生や成り立ちを解明するため、私たちの研究室では、ロケットを使って宇宙の光を観測する、といった研究に取り組んでいます。地上の望遠鏡では暗くて捉えられない光なので、望遠鏡を搭載した観測ロケットを打ち上げ、宇宙空間で観測するのです。私自身が携わっているのは、望遠鏡のミラーを最適化するためのシミュレーションや性能評価。無数に枝分かれする選択肢からベストなプランを導き出すのは難しいですが、私の採るデータが観測の成否にも関わる重要な役割を果たすと思うと誇らしいですね。今年6月には共同研究をしているアメリカのロチェスター工科大学を訪問。来年に実施を計画しているロケット打ち上げに向け、着々と準備を進めています。

アメリカのロチェスター工科大学の実験室で、観測ロケットCIBER-2の光学系を組み上げたときの記念写真。
小学生の頃からふくらませ
続けてきた宇宙への想い。
今やアメリカの仲間と
共同研究を進める自分がいる。
6月の渡米の目的は、望遠鏡のレンズ交換や光学系のチェック。打ち上げはアメリカで行うため、望遠鏡の実物は現地にあるんです。日本ではシミュレーションしかできないので、現地で実物に触れられたのはうれしく、モチベーションが高まりました。ロチェスター工科大学の共同開発メンバーとも、それまでオンラインミーティングは重ねてきましたが、実際に会って協働するなかで、初めてチームワーク意識を実感できたと思います。英語でのコミュニケーションの難しさや意見の違いはあっても「同じ目的に向かって一緒に頑張っているんだ」と。
小学生の時、科学館の学芸員から皆既月食の解説を受け、私は宇宙に関心を抱くようになりました。そして夏休みに毎年訪れる祖父母の家から見た満天の星空の美しさ、理科や物理の先生のお話、高校の地学部での活動などが、私の宇宙への想いをさらに大きく育ててくれて…。幼い頃から感じてきた宇宙の不思議について、今、授業や研究を通して「こういうことだったのか」と自分の目で確かめながら徐々に理解できていく感覚がすごく楽しく、ロマンを感じます。
意欲的な挑戦を支えてくれる
先生のもとで成長。
そして来春から、企業での
新たな挑戦が始まる。
研究に必要な知識やスキルの多くは、研究室に入ってから身につけました。光学などの基礎は学部での授業で学べますが、そこからの応用は自ら率先して取り組みました。例えば3D CADを用いたシミュレーションの技法は、先生にお願いして学外でのセミナーに参加させてもらい、勉強しました。研究室の松浦先生は、意欲ある学生の挑戦を積極的に後押ししてくれるんです。渡米もそうですが、「やりたい」とアピールすることで、超小型衛星に関するセミナーを他大学で受講したり、小惑星の掩蔽観測(※)のチームを作って広島や北九州で観測を行ったりと、たくさんの挑戦をさせてもらいました。JAXAとの連携大学院協定により、希望すれば修士課程1年の夏からJAXA宇宙科学研究所での研究にも参加可能です。
春からは、宇宙や航空の分野のシステムエンジニアリング企業で働きます。博士課程に進んで来年のロケット打ち上げを見届けたいとも考えましたが、それは後輩たちに託して、私は社会での新しい挑戦を選びました。三菱重工グループの会社なので、最新ロケットのシミュレーションに携わるチャンスもあるかもしれません。楽しみですね。
※掩蔽(えんぺい)とは、観測している天体と観測者の間を他の天体が通過し、観測している天体が隠される現象のこと。