
国際ワークショップでの
研究発表を機に、ドイツ留学へ。
大学院 理工学研究科 環境・応用化学専攻 博士課程2年生
※取材当時
青木 航平 さん
スマホやテレビの液晶、飲料容器のPETなど、私たちの身のまわりには有機化合物があふれ、快適で便利な暮らしを支えてくれています。僕が大学院で取り組んでいるのは、そうした有機化合物を作るための反応開発の研究。有機化合物は様々な化学反応によって作られますが、「もっと簡単に」「もっと環境に優しく」「もっとローコストで」といった考え方で新しい反応を探り、有機化合物の「より良い作り方」を追求しているんです。先日は国際ワークショップに参加し、国内外の先生方を相手に英語で研究発表と質疑応答を行うという挑戦の機会に恵まれました。難しかったですがやり遂げ、しかもこれがきっかけでドイツへの留学が決まり、今、大きな手応えを感じています。

思った通りの結果が出なかった時も「ダメだった」と考えるのではなく、「そうなった理由を生かして、違う方向で成果が出せないか」と考えることが大切だと、青木さんは話します。物事を一つの面だけから捉えるのでなく、常に見方を変え続けるといった意識を持つことが、新しい研究テーマを創出していくための力に繋がっています。
「今までにないものを作る」だけが
有機化学じゃない。
「今までにない方法で作る」研究と、
向き合い続ける。
大学3年生の時、4年生から所属する研究室を選ぶため、僕は最も関心が強かった有機化学の研究室を見学して回り、その時に今の白川先生の研究室で反応開発という研究分野と出会いました。他の研究室では新しい有機化合物を創り出すといった研究が行われ、僕自身も「今までにないものを生み出すのが有機化学の面白さ」と考えていたのですが、この研究室では「今までにないもの」でなく「今までにない方法」で作る研究をしていて、「えっ!これを混ぜるだけで、こんなに簡単にこれが作れるの?!」といった新鮮な驚きに満ちあふれていた。その面白さに惹かれ、以後ずっと、ここで反応開発の研究に打ち込み続けています。
そんな僕が来年は、国際ワークショップにいらっしゃっていたドイツの先生の研究室に、3カ月間留学することが決まっています。これまで関学の研究室でしか研究をしたことがなかったので、世界に出て、世界の研究の状況を肌で感じ取れるというのは絶好のチャンス。研究者としてもうひと回り大きく成長できれば、とワクワクしています。
直接的な社会貢献ができている
実感はなくても
世界の科学者の「積み重ね」の
一つに繋がるなら。
今の研究を通して社会に貢献できているかは、正直、自分ではよくわかりません。目に見える成果と言えるのは、修士2年生の時に発表した国際論文。僕がファーストオーサーとして出した初めての論文でしたから、達成感は大きかったです。ただ、僕たちの研究は基礎的なもので、産業などに繋げるにはさらに様々な応用研究が必要ですし、すぐに「社会に役立つ」といった実感が得られるものではないんですよ。
研究って、いろんな世界の科学者の積み重ねだと思うんです。ノーベル賞を取るようなすごい発見も、いきなりそれが浮かんだのでなく、先人たちの研究があったからそこにたどり着けた。なので、僕の研究自体が「すごい」にならなくても、すごい研究成果を出した人が一瞬でも僕の論文に目を通してくれていたとしたら、社会貢献ができたことになるのかな、と感じます。
まあでも僕自身のモチベーションは、社会のためという以上に、研究そのものの面白さにある。面白い研究をずっと続けていたいという思いで、博士課程まで進んできました。将来のことはまだ具体的に決めていませんが、留学を次のステップに向けての「転機」にしたいですね。