山下 ののみさん

好きな柄をシステムで推薦。
感性工学でムダのない社会を。

大学院 理工学研究科 人間システム工学専攻 修士課程2年生
※取材当時

山下 ののみ さん

私が大学院の研究室で取り組んでいるのは「人の好みに合った服の柄を推薦するシステム」の開発。さまざまな「柄」に対して人がそれぞれどんな印象を抱くか、たくさんの人を対象にアンケート調査を行い、その印象と柄から得られた特徴との関係性を機械学習でAI(人工知能)に学習させ、これをもとに「あなたはこんな柄が好きでしょう?」といった推薦・提案を行うシステムです。このように人間のあいまいな「感性」をコンピュータに理解させ、デザインや表現、プロダクトなどに活用する学問が「感性工学」。私はこの研究を通して「その人が本当に欲しいと思う服だけを必要なぶんだけ作る」といった、ムダのないものづくりの仕組みの実現に貢献したいと考えています。

「かわいい」「かっこいい」「ダサい」など、人それぞれの「感じ方」をAIに理解させるには、より優れたアルゴリズムの生成などにより、機械学習の精度を高めていくことが重要にとなります。「難しいですが、他ではなかなかできない、研究者としてすごく貴重な体験をさせてもらっています」と山下さんは話してくれました。

ファッションが好きで、
人の価値観の違いへの関心が強い。
そんな自分にぴったりの
研究分野が「感性工学」だった。

大学4年生からの研究室選びの際、説明会で長田教授の感性工学研究室について初めて詳しく知り、「人間の感情や感覚とテクノロジーを合わせた研究って面白そう!」とワクワクしました。私はもともとファッションが好きということもあり、「これこそが自分がやってみたかった分野だ」と感じ、この研究室への配属を志望したのです。
私は友だちから「結構クセの強い服を着ているね」などと言われることがよくあります。「えっ?私はかわいいと思ってるんだけどな」って話しながら、そのたびに人の好みや価値観の違いへの関心が高まりました。今の研究には「ものづくりのムダをなくし、かぎりある資源を有効に」といった目的もありますが、私自身はそれ以上に「人それぞれの好みや価値観を明らかにしてみたい」といった気持ちで取り組んでいます。その人自身も気づいていない「本当に自分が好きと感じる柄」をこのシステムで提示できれば、個人のwell-beingにつながると思うんですよ。ただ、今の時点ではまだ柄の推薦を実行できるまでには至っていないので、年内にはその段階に到達できるよう、頑張って研究を進めたいですね。

さまざまな人との関わりの
なかで重ねた人間的成長が
「人の感性に響くシステム」
の研究に生かされてゆく。

1年生の夏休みに台湾の大学でPythonを学ぶプログラムに参加し、その時は英語でのコミュニケーションに苦労しました。幼い頃から海外で暮らしてきた私ですが、日本人学校に通っていたため英語を使う機会が少なく、「帰国子女なのに英語が話せない」というのがコンプレックスになって…。ですから台湾から帰国後、英語の勉強にはかなりの力を注ぎました。おかげで今は少し自信が持てるようになっています。
私は人と関わり合ったり人の話を聞いたりするのは大好きですが、自分から話すのは決して得意ではありません。それでも関学入学後は、たくさんの人と交流し人と話すことにも慣れ、自分の成長を日々実感しています。ハッカソン※に参加して学外の人たちと技術を競い合ったり、ゴスペルサークルに入って大勢の人の前で歌ったり、障がいのある学生の授業のサポートに携わったり。研究室でも「すごい!」と尊敬できる先輩や仲間から刺激を受けながら学んできました。そんななかで重ねた成長は、今の研究にも生かせていると思います。何しろ「こんな柄の服が欲しかった!」と、人に喜んでもらうシステムの研究なのですからね。
※ハッカソンとは、エンジニアやデザイナー、プログラマーなどでチームを作り、短期間集中的にシステムやアプリケーションを開発するイベント。

PROFILE

山下 ののみさん

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大学院 理工学研究科 人間システム工学専攻 修士課程2年生
※取材当時

山下 ののみ
(やましたののみ)

早稲田渋谷シンガポール校出身。三重県で生まれ、父親の仕事の都合で2才から中学生の時までマレーシア、フィリピン、中国と移り住み、高校はシンガポールの日本人学校に。「大学ではものづくりについて深く学びたい」と考え、高校の先生の勧めもあって関西学院大学 理工学部 人間システム工学科に入学。ロボティクスやAI、プログラミングなどについて学び、『海外理・工・生命環境学プログラム』では台湾に短期留学して現地の大学でプログラミングと英語を学修。4年生からは長田典子教授の研究室に所属。人間の感性を数値化してコンピュータに理解・表現させるといった「感性工学」の研究に取り組み、なかでも「人の好みに合った服の柄を推薦するシステム」の開発を自身のテーマとし、大学院進学後の現在もこの研究を推し進めている。また、学部生の時にはアカデミック・コモンズ・プロジェクト『機巧堂(からくりどう)』に参加し、電子工作やプログラミングなどによって「ものづくりの楽しさを広めること」をプロジェクトテーマに、勉強会やハッカソンの開催などの活動を繰り広げた。障がいをもつ学生の修学支援を行う『学生サポートスタッフ』としての活動にも大学2年生から取り組み、現在も続けている。そのほか課外活動では、学部生の時にゴスペルサークル『K.G. Blessed Choir』に所属し、歌だけでなくピアノ演奏にも挑戦した。来春の大学院修了後は、Webアプリやスマホアプリなどの開発を手掛けるIT企業への就職の内定を受けている。ファッションへの関心が強く、休日にはショッピングに出かけたり、また、自分の部屋でゲームをしたり本を読んだりして過ごすことも多いそう。

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